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UNIVERSITY OF TOKYO HOCKEY TEAM
東京大学運動会ホッケー部
Est. 1925
2016-06-18
絶景
桑原 啓太
ゴールキーパーはグラウンドの4分の1の領域にしかいられない。点を失うばかりで取ることはできない。脳裏に焼き付いているのは味方の鮮やかな得点ではなく、苦々しい失点ばかりである。
それでも、自分はゴールキーパーというポジションが一番好きだ。この場所から見える景色が好きだ。この景色は、グラウンドの他の味方には誰も見ることができない。自分だけのものだ。
2年前、キーパーになりたての頃と、見える景色は全く違う。かつては、めまぐるしく動くボールを目で追ってばかりだった。その瞬間の、狭い場所しか自分には見えていなかった。今の自分に見えているのはボールだけではない。逆サイドの敵が見える。スペースが見える。敵の次のプレーも少なからず見えていると思う。見える情報をもとに味方に指示を出し、守備を組み立てることの面白さを知ってから、キーパーが楽しくて仕方がなかった。
一方で、人の心というものはなかなか見えない。仲間が何を思って一緒に活動しているのか。同じ団体に所属しながら、僕たちは心を一つにできていないのではないか。そう思うことがしばしばである。3年になり、この部を少し達観するようになった。これも今までには持ち合わせていなかった視座だ。
人の心というものは見えない。少しでも垣間見ようと、僕は仲間の雑感を読んでその心を推し量ってはいるが、やはり見えないものは見えない。
それでも僕は仲間を信頼している。この仲間と、未だ踏み込んだことのない高みに到達し、最高の景色を拝したい。
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