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2014-11-16

根拠なき自信

羽田 泰彬

一からホッケーをやり直す。
そう決めて僕は東大ホッケー部に入部した。だが予想以上に、全てを一からやり直すというのは難しいことだった。

入部当初が一番自分に自信を持ってプレーできていたと思う。当然同期の中では一番上手い。しばらくは同期に追いつかれることはないだろうと調子に乗っていた。そして今まで知らなかった新しい技術を次々教わり、練習に行くのが楽しみで仕方なかった。

しかしすぐに壁にぶつかった。体に染みついた崩れたフォームが直らない。また、せっかく基礎練習で新技術を練習しても、実戦的な練習では高校までの技術に逃げてしまう弱さを、克服できない。その結果なかなか新技術を吸収できない。周りはどんどん上手くなる。
焦った。なんとかしなければ、と思った。だが結局、何もしなかった。自主練を増やすことも、練習の質を高めることもしなかった。心のどこかでは、そのうちなんとかなるだろうと思っていた。

あっという間だった。気づけば同期に追いつかれ、そして追い越されていった。
自業自得と分かっていたが、とても悔しかった。その悔しさをバネに練習に励めばもしかしたらすぐ追いつけたかもしれない。だがそうはできず、負の方向に流されていった。自信がなくなり、プレーも態度も弱気になった。ジュニア戦では何回もチャンスをピンチに変えた。
「羽田がいない時の方が、試合勝てるね。」ある時冗談でそう言われた。笑えなかった。ただただ自分が情けなかった。

そして冬、FWにコンバートされ、さらに暗い気持ちになった。体力、走力、シュート力、どれもない自分がFWで活躍できるはずがない。案の定、紅白戦で出ても一回もボールに触れず終わることが珍しくなかった。練習に行くのが辛くて仕方なかった。

ずっと続いた苦しみから解放されたのは、紅白戦で初めてゴールを決めた時だった。とは言っても、華麗にシュートを決めたわけではない。ゴール前での競り合いで、偶然足元に転がってきたボールを押し込んだだけの、ラッキーゴールだった。それでも嬉しかった。勝利に貢献できたことが嬉しかった。
FWも悪くないな、と初めて思えた。
それからは、得点力を磨こうと練習に励んだ。試合で点を決める度に、少しずつ自信が戻ってくるように思えた。

FWになってもうすぐ一年、できることも増えたが、新たな課題もどんどん出てきている。判断力、体力、スピード、テクニック、フットワーク、どれもまだまだ全然足りない。けれど前のようにネガティブにはなっていない。判断力、体力、スピード、テクニック、フットワーク、どれもまだまだ伸びる余地がある。必ず伸ばす。

最後に、僕の勇言実行。
自分のドリブルやシュートで試合の流れを引き寄せ、チームの勝利に貢献する。
そして、豪快で華麗なゴールを決める選手よりも、冷静に、時に泥臭くシュートを打ち、決めて当たり前のシュートを確実に決めきれる選手になる。
道のりは長いが、絶対なれるはずだ。根拠はなくても、そう思える。

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