UNIVERSITY OF TOKYO HOCKEY TEAM
東京大学運動会ホッケー部
Est. 1925
2015-10-02
主役
堀田 和里
わたしは中高時代に演劇部に所属していた。
引退公演では主役を演じ、カーテンコールでは花道を独走した。
二台のスポットライトはわたしだけを照らしていて、それが最高の快感だった。
わたしはそういう人だ。
しかし、ひょんなことから全く畑違いの運動会の、聞いたこともないホッケー部の、性に合うはずもないマネージャーになった。
自分の選択だから文句は言えないし、自分の弱さによるところも多いけれども、4年間思い返してみて、辛いと感じることばかりだった。
プレーヤーならホッケーがうまくなったり、単純に好きなスポーツができるという喜びがあるけれど、マネージャーはどうだ。技術としてはなにも身に付かないし(自分が身に付けようとしなかっただけだが)、仕事そのものが楽しいわけではない。どうしてマネージャーになったのか、もうやめてしまおう。何度そう思ったかわからない。
しかし、3年生でマネージャー長になって、そんなことも言っていられなくなった。後輩たちはわたしの指示を待っているし、マネージャーの仕事のすべての責任はわたしに任された。本当に遅いと思うけれども、ここで初めてマネージャーの仕事とは何かを悟った気がする。
マネージャーの仕事は、誰かのためにやるわけではないということを。
自分が勝ちたいから、やるのだということを。
「プレーヤーのみんなのためにやっている」と思っていたから仕事の魅力にちっとも気づけなかった。
「自分が勝ちたいから」、プレーヤーの試合反省の質を高めるために試合のビデオの質にこだわる。「自分が勝ちたいから」、練習の効率を上げるためにタイムキープを正確にする。
こう考えたらマネージャーの仕事は本当に奥が深かった。
こう思えるようになったのは、どんなに文句を言おうとずっと自分に向き合ってくれたプレーヤーの先輩や同期、
そして何よりも、マネージャーの後輩たちのおかげだ。
恥ずかしながら、後輩マネージャーたちのおかげで、わたしはマネージャー長であることができた。
何度も意見をぶつけてくれて、その度にたくさんのことに気づかせてくれた彼女たちこそ、わたしをマネージャーとして一番成長させてくれた。
彼女たちには、感謝してもしきれない。
さて、今年のBullionsのスローガンは、
共鳴
個が立ち、響き合い、大を成す
これが決まったとき、わたしは「個が立つ」という言葉を聞くたびにどきりとした。
マネージャーとして自立できていないことを知っていたからだ。
自分が何をやりたいのか、自分がどんな風にチームの勝利に貢献したいのか、わからなかった。
でも今は、決めている。
チームを見て、どんな小さな異変でも、どんな小さな成長でも、感じ取れるようになりたい。そしてそれをしっかりみんなに伝え、チームを良い方向に動かしていきたい。
感じ取っていても伝えることには勇気がいる。わたしはそこで躊躇してしまっていた。けれども、残された2ヶ月、そこで躊躇なんてしていたら後悔するだろう。きちんと伝える。「響き合う」に通じるところだ。
そして、このチームで最後の試合を笑顔と嬉し涙で飾りたい。
可愛い後輩たちに最高の舞台を用意してあげたい。
マネージャーは試合のときはグラウンドという舞台には上がれないし、スポットライトを浴びることも少ない。世間では脇役と言われるだろう。
けれども、マネージャーは決して脇役なんかじゃない。
自分の気持ちの持ち方と行動によっては、主役ばりの存在感を放つことができると思う。
私は、これからもっともっとチームに寄り添って、私にしかできない声かけをする。
プレーヤーにない視点でチームを見ていく。思ったことは発信する。
そして、Bullions2015勝利の物語は堀田なしには語れないと言わせしめる。
花道を独走したあの時のように、胸を張って引退試合のベンチを去っていきたい。