UNIVERSITY OF TOKYO HOCKEY TEAM
東京大学運動会ホッケー部
Est. 1925
2025-06-09
もしドラ
小川泰輝
-もし大学ホッケーの男子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら-
去年はguilty moratorium だったから、ずっと映画と小説という虚構の世界に浸っていた。現実なんてどうでもいいと思っていた。それは部活から、いや、社会から逃げていたかったからだと思う。部活に入ったことが自由からの逃走であるとしたら、逃れられない責任からの逃走をはかる愚かな時期であったように思える。
4年生(?)という立場になり、幹部をやることになり、試行錯誤し半年が過ぎた。分析長になり、対戦相手の試合動画や日本リーグの動画などをより見るようになった。ホッケーとそして何よりも部活と向き合うことが必然的に増えた。ただ、幹部としてやっていく上で、わからないことだらけだった。まずメニューがうまく作れない。日曜日の練習後にメニューを作るミーティングをやるわけだが、課題があったとして、それを解決するためのメニューが全然思いつかない。メニューを作るのってこんなに大変なのだと自分が作る側になって初めて知った。切り替えの速さとかカウンター時の攻撃とか、サークル内の守備とか色々課題があるわけだが、それを改善できるようなメニューを捻り出すことができない。どうしても練習のための練習になり、属人的なものになってしまうような気がしている。
当然、各個人個人に対してはドリブル上手くなったなとか、スイープのフォーム綺麗になったねとか思ったりする。ただ、カウンターやバップでいい形を作れた時に、それが自分たちのメニュー作りとか、ゲームモデルの効果なのかよくわからなくなってしまうことがある。
そんな中でも成城戦まではこのチームはかなり調子が良かった。東商戦も双蒼戦も勝ち、いい感じでチーム隣、成城大学にも勝つことができた。特に京大との試合なんて逆転勝利であった。去年までのチームの雰囲気では、得点を取られた後にみんな死んだ顔をしていて、逆転するなんて考えられなかった。そして今年の代になって初めて挑んだ成城戦、1対0とスコアは微妙であったが、勝つことができ何よりも嬉しかった。分析長として対策を幹部やコーチと相談しながら組んで、取り組むことができた。自信にもなった。
ただ、東海戦で後半にキツイ展開になってから打開をできなかったあたりから歯車が狂ってきたように思える。あの試合僕は自分の分析が足りていなかったと立教と東海の試合の動画を見直してみて痛感した。サイドに圧縮してくるなんて見れば当然わかることだったし、それを元に対策を練るべきであった。SOのおかげで勝てたものの、ほっとしたという気持ちだった。
今年の幹部の弱さが出てしまったのが、立教戦であった。立教が東海に大敗した試合を生でみていたし、練習試合でも大勝していたから、順当にやれば勝てるだろうと高を括っていた。みた試合とかなり違うプレーをされ、動揺し、カウンターから続けて2点を失った時正直絶望していた。ハーフタイム落ち込んでいるチームを鼓舞したいと思って何とか口火を切ったが、あまりうまく言えていなかったと思う。また、その後に出てくる発言は殆ど三年生からだった。そして逆転することができず2年連続、3期連続の下襷となった。あの試合こそ4年生がリーダーシップをとるべき試合だった。そしてそのことを試合後コーチや監督に言われ、情けないなと思った。Pre Bullions2026という側面が今年のチームにはあって、それは四年生が4人しかいないからなのかもしれない。ただ、2023は郷中さんと古市さんの代だったし、二人がチームを構築していた。だから人数はいいわけにならない。
当然中央には勝ったが、五位、六位決定戦に挑まないといけないという現実をどこか消化できずにいる。負け犬の遠吠えであるのかもしれないが、僕はこのチームが一橋とか学習院にとても劣っていると思ったことがない。何なら勝てると思っている。そうじゃなかったら、プレイヤーでもないのに最後までこのチームにいない。その舞台に立てていないことが今は非常に悔しい。
色々よくわからなくなってしまったから、自己啓発本にでも縋るかとでも思って、ドラッカーの『マネジメント』を図書館で借りて読んだ。『マネジメント』を読んで驚いたのは、ここに書かれている内容の多くが、すでに先輩やOBさんたちに言われていたことが多くあったことに気づいたことだった。各分野のスペシャリストを作るというのは古市さんが言っていたことだし、目標管理や自分たちの弱みを把握するということはコーチ陣から、そしてこのチームが1年の時からずっとやってきたことだった。
マーケティングとかイノベーションみたいな言葉はどこかコンサルティングチックであまり使いたくないが、プレイヤー・マネージャーともに全部員が部活にいて楽しいと思える場所を作ること。そしてかつてない勝利をしてスタメン、ベンチ、ベンチ外、マネージャーを含めて人生の一場面と言えるような感動を得る体験(つまり新しい満足)を作り出すということが、僕が考えるイノベーションである。
まあそんなの当たり前でしょという感じだが、実はそういう当たり前のことができていないことに弱さがあるような気がする。どこか自己管理が甘く、等閑になってしまう雰囲気があって、それは幹部にも共通している。誰も自分すらマネジメントできていない。
マネージャーに必要なものは、才能でも聡明さでもなく真摯さだとドラッカーは語る。その真摯さがいまの自分にあるのだろうか。成果、すなわち勝利への真摯さが欠けていた春リーグだった。
それでも、秋は絶対に勝ちたいから。一部に上がって今年の代が2020以降1番うまく行ったことを証明したい。そして4年が4人しかいなかったのに一部に上がることができた伝説の代であると言いたい。そのためにまず、秋僕らがやれるということを証明するために、次の武蔵戦はどうしても勝ちたい。そして自分がやれることに真摯に取り組もうと思う。
目標は実行に移さなければ、夢に過ぎないから。