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2019-04-29

空を眺めて

磯田 知輝

撃たれた鳥は、落ちるとき必ず上を向くという。理屈っぽい私からすれば、重心だの空気抵抗だのと理由をつけて考えてしまうところではあるが、直に自分の目でその姿を見るとそうは思えぬ何かを感じるらしい。なんでもその光景は、もはや飛ぶことのできない鳥が二度と距離の縮まらぬ遠い空に想いを馳せるようにも見えるのだそうだ。

私はこの部活生活で何度空を見上げたことだろう。怪我をした時、同期の活躍を眺めている時、後輩に抜かれた時…。あぁ、またこの景色か。

しかし幸いなことに、私にはまだ何ヶ月も可能性が残されている。上を見て羽ばたき続ければ、このボロい体が浮かび上がり少しはあの空に近づけるやもしれない。なんだ危なっかしい、どうせすぐまた落ちる、周りからそう思われようが構わない。そんな不器用な飛び方も実に自分らしくて良いではないかと思う今日この頃である。

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