UNIVERSITY OF TOKYO HOCKEY TEAM
東京大学運動会ホッケー部
Est. 1925
2021-10-22
一員から一因へ
伊藤 良太
DFとしてある程度の事ができるようになった二年生の頃は、練習試合に出ても今日はこのプレーで活躍した、と言えるものがなくて、何か一個自分の特技を身につけられると良いよね、とずっと言われていた。
だから、そういうものが見つからないまま三年になって代表に選ばれた時は、試合でミスばかりする自分が他の育成のメンバーと違って優れている事なんて無いと思っていたし、選ばれているという自覚が本当に足りなかったように思う。
そんな中、先輩の怪我もあり去年の専修戦で公式戦デビューをした。中々に酷いプレーをした前半の後のハーフタイムで「後ろから下條に指示出してみ、そうしたら落ち着けるから」と言われたのをよく覚えている。当時は試合中も自分のプレーについてしか考える余裕がなかった事もあり自分より上手い選手に指示だしするなんて考えもしなかった。
それ以来、他人の良いプレーは勿論、ミスまでもが凄い目につくようになった。上手い奴でもミスをする。だったら自分は全力でカバーしよう。自分のミスは味方がいつもカバーしてくれている。自分が本当にチームの「一員」になれた気がした。
ただ、最近はそんな事も忘れかけていたように思う。Bインカレで優勝出来た事についても、自分が春に比べて特別上手くなったように感じていた。実際は前線の得点力が上がった事が一番大きいのに。だからこの間の横市戦で慢心してFW、MFに頼りきりでリスクケアをサボる事なんかが出来てしまっていた。
DFというポジションは個人的には少し複雑で、PCに携わっていない自分は直接得点に関わる事も少なく、サークル付近にボールを届けてもチャンスに繋がるとは限らない。押し込む時間帯が続く時はボールに触れる事すら無いかもしれない。一方、自陣で相手に取られると一気にピンチに繋がる。FWは取られても直接ピンチには繋がらないしすぐに取り返しに行けるからいいなあとか思っていた。だから以前は試合をしてもこのプレーで活躍した、と思える事が全然なかった。
でも今は違う。FW、MFがいかに前線で頑張っているかを知っているし、たとえ自分が直接前線に届けたボールからチャンスに繋がる事はあまり無くても、チームが得点したら自分の事のように嬉しい。そう思ったら、リスクケアなんてサボっていられない。得点が生まれやすいようにチームの為に出来ることなんて、ボールに関わっている場面以外でも沢山ある。そういった意味も含めて、全部やり切って初めて勝利の「一因」になれると思う。
未だにこれ、と言えるような特技を持っていないけれど、自分が上手くなってはいるのを確かに感じるし、もっと上を目指せる。
「この代はモブキャラがどのくらい頑張れるかにかかっている」
引退まであと二ヶ月もない。目標達成の為に出来る事はまだまだあるはずだ。